( 桓騎 作画引用:原泰久先生 作 キングダム第699話)
振り返ってみると、大王嬴政と桓騎がサシで話すのはコレが初めて。
新六将結成の際は、桓騎が一人でペチャクチャ喋ってて小物感が出てたけど今回はどうだったか?
軍律の話は結局うやむやになってて、しかも、昌平君の評価が大きかったことを鑑みるなら、処分は最初から決まっていて、大王が出てこようが来まいが結論は同じだったのではないか?
戦後の統治の問題については、王建王との会談での法治国家論で、読者的には一応の納得が付いているハズなのに、また蒸し返しの問題提起をされても、不毛な議論にしかなりません。
しかも、話も前回と変わらず、二転三転して、いろいろ話てましたが、今週は最後に、神(作者)様が、イッパツ歴史のネタバレをかましてくれたので、あんまり嬴政が戦場まで出てきた意味が無くなったような気がしてきます。
今回の話って、結局、虐殺辞めさせたいなら、そもそも秦国の法律(軍律)の作り方がマズかったってだけの話じゃないですかね?
ただ、嬴政が桓騎の肚の底に何か気づきかけたのは大きな見どころ。
ではでは、今週もキングダム本編について振り返っていきましょう。
キングダムネタバレ-話を戻す嬴政
前回までの会見、お互いに感情が高ぶったのか?
嬴政も桓騎も本来の議題と直接関係の無い話題を口にしだして、どうなるかと思われた矢先。
今週の冒頭で、キチンと嬴政が話を戻してくれました。
良かった良かった。
桓騎が“侵略戦争を仕掛けてきたのは大王で、一番人を殺しているのはお前”とかってイチャモンつけてきましたが、今週、イキナリこの言葉に反応してきたのは黒桜です。
黒桜『その通りだ、戦争しかけてんのはお前だ!その死人の責任もお前にある!お前こそ一番の人殺しだ、そんな奴にお頭の事をとやかく…。』
とまあ…。
いや?お前の出る幕じゃないんだけど黒桜?と、多くの読者も思ったでしょうが、流石にここは嬴政です。
嬴政『黙れ。』
黒桜『なッ?』
“なッ?”じゃなくて当然だろう。(笑)
流石に、桓騎の手下にまで大王をお前呼ばわりさせちゃいかんでしょう。
桓騎と黒桜の語る流れで、一見、“誰が一番殺した悪い奴論”になってきましたが、確かにこれは“屁理屈レベル”の話です。
桓騎は『屁理屈で片付けんなよ、お前がヤッたのは何十万どころじゃねえんだぞ。』とか、言っていますが、それに反論するなら、将軍というお仕事をさせて貰っているお前らは一体何者なんだよ?って話になります。
今更、“誰が殺した論争”をするなら、もうパタ○ロみたいに、桓騎軍と大王軍の全員で、クックロビン音頭でもやって茶を濁して解散して頂くでいいんじゃないですか?
桓騎の反論も分かるのですが、ここは嬴政もピシャリと言っているように、嬴政が上位責任者で、話の要点は今は捕虜の話をしていることと、命じてもいない虐殺に対して桓騎に説明責任を求めているだけの話です。
桓騎は、虐殺が無くてもお前が起こした戦争の結果の一部だと語りますが、これは流石にさらにはぐらかしではないでしょうか?
むしろ、嬴政に処断される覚悟を持って作戦を実行していたハズの桓騎が、責任逃れをしているように見えます。
もとよりそれを断罪しに来たのは嬴政なのですが、桓騎の言い分は『責任は全部俺でお前は裁くだけかよ。』と語ります。
そして、嬴政は『戦を始めた手前、暴走した桓騎を裁くのも俺の責任。』とより大きな責任で包括します。
で、ここで政は、今回の桓騎の暴走に対する責任の話と、最終的に列国を制覇した後の、さらに大きな責任の話について、論及させて話をすすめます。
桓騎『まさに血の王だ、お前に比べれば俺なんてかわいいもんだぜ。』
嬴政『承知の上だ、血を多くながず故に、兵士の死と民・捕虜の死は強く線引きせねばならぬ―。』
ここまでは、一応、立場上の強さで、政の話に説得力が伴っているように思います。
ここまでの話であれば、まだ最初の軍律の話に照らして、話題の“争点”がそもそも、軍律記されている、捕虜虐殺に対する合理的理由に当たるのか?という、評価基準の話で判定されたからです。
しかし、ここで嬴政が過去の六将白起の話を持ち出したことで、再び話の方向性が変わっていきます。
嬴政『我々は、現六将から“白起”を出すわけにはいかんのだ。』
本営側の言いたいことはめちゃめちゃ分かります。
李斯が咸陽で話していた通り、長平の所業が繰り返されるなら、その後の統治に支障が出るからです。
現世代の武将である桓騎や摩論も白起と長平の出来事は知るトコロなのでしょうが、一応は、この場を淡々と嬴政の話を聞き続けます。
桓騎はともかく、摩論、リン玉、黒桜らは、なんか神妙に嬴政の話を聞いています。
これは確かに、全国を統一するとかの規模じゃなくても、戦後処理の話として、いち武官に過ぎない、彼らでも十分理解可能な話です。
そして、問題は、戦乱の後に“列国と一つ”になる段階について嬴政が論をすすめたてきた時に、桓騎が再び咬みついてきました。
桓騎『ちょっと待て。お前本気で言ってんのか? 虐殺の云々以前に、他人の土地に侵略して殺して奪って、その上で連中と一つになれると、本気で思ってんのか??』
嬴政『そうだ。』
桓騎『ッハハハハハ。黒桜、どう思う、今の?』
黒桜『キレイ事かと。』
話を振られた黒桜とて、仲間である雷土が殺された話を以って、趙人全体への復讐心を吐露します。
読者的には、雷土の死は⇒空前の責任放棄将軍であった扈輒の死に逃げから⇒現在の顛末という理論は、読んでいたので一応は理解可能なのですが…、
再び、軍律の話から話題が大きく逸れていきました。
嬴政にしても本来は、『戦争は政治的問題解決の数ある手段の一つの話であって、お前ら武官と戦争が終わった後の統治の方法論まで議論することまでは期待していない。』とでも、クラウゼヴィッツ的に言ってしまえばそれまでなのですが…、
ここは一応、黒桜の心情の吐露を受けた形で『難しいことを重々承知の上。』と答えます。
で、重ねて桓騎が嬴政に咬みつきます。
桓騎『国を一つにして戦をなくすと言いたいんだろうが、人はそうはならない。』
『絶対に、お前は人に期待し過ぎだ、秦王よ。』
今週、桓騎本人にめちゃめちゃ画力が掛かっていて、神(作者)様的にも、ここが桓騎の決め台詞で見せ所だったみたいですが…、
読者的には、ちょっと微妙だったのではないでしょうか?
だから政は“法治国家”路線を目指してるんでしょ?って話だからです。
六将とは言え、別に呂不韋や王建王のように、そもそも統治者の立場にない桓騎が統治の問題を提示してきても、ライバルとしては力不足も役不足もいいトコロです。
それは、むしろ李牧のように宰相の地位を兼ねるような相手なら、話し合いが成立すると思うですが…、
それをやるにしても、次は、王建王の時のような抽象的や概念レベルの話ではなくて、今後は各論レベルで具体的な法形態に落としこんで表現されなくては…、
作品中の秦国では何も仕事が進んでないという話になってしまいます。
既に一度、宣言した法治国家建設にしても、何回抽象論で足踏みしつづけるのか?
しかし、神(作者)様としても、別にここで嬴政自身に、桓騎を方法論で真向説得させるつもりではなかったようです。
結果的に、嬴政自身が妥協点を作り出し、一度振り上げた断罪の剣を下げることになります。
でなんで、今週の見どころは、どこか嬴政も桓騎を相手に、統治論でマジレスすることなく、桓騎の言葉を額面通り『その通りだ。それのどこが悪い。』と受け止めて、桓騎の相貌から何かを読み取った場面が真のハイライトなのではないかと考えます。
嬴政『お前みたいに何もせず絶望…、…絶望…? いや…』
途中で桓騎の顔を見て、明らかに何かを見て取った反応を示す大王を見て、周囲の昌文君やリン玉、黒桜も疑問感を示します。
昌文君『大王様…?』
桓騎『何だよ。』
そこからしばらくの沈黙が流れます。
結局、桓騎も大王もお互いの言い分の決着がなされた状況になっていません。
桓騎『フッ、結局どうすんだよ、この俺を。首をはねたきゃはねろよ、その時はお前もココで死んで、その崇高な血の道もこれまでだ、今生きている人間にとっては、その方がいいかもなー、クククク。』
嬴政『…。』
暫くの沈黙の後、嬴政は一応の結論を下します。
嬴政『何も理由が無くば、迷わずに斬首するつもりで来た。だが、今回は摩論の説明に免じて赦すことにする。豹司牙、剣を下せ。』
桓騎『摩論の説明じゃ不十分じゃなかったのか?』
摩論『お頭!』
嬴政『赦す理由はもう一つある。扈輒軍撃破の功だ、よもや桓騎軍単独にて趙軍総司令もろとも、その本軍を討てるとは思っていなかった。』
ということで、その成果の結果は計り知れないという事もあり、軍総司令である昌平君の評価の高さを勘案して、嬴政の決断では“桓騎を赦す”と説明するに至りました。
なるほど。と言ったところです。
結局、決め手は“摩論が頑張った。”という話でしょう。
読者が客観的に見れば、桓騎一人が大将軍の説明責任を果たさないで子供みたい詰められるのをゴネてて、大王も大王で、今更現場の将軍相手い、法治国家の君主としてキチンと裁判する準備も出来てなくて…、、
結局のところ、話し合いの内容自体は微妙で、大王軍も桓騎軍も無傷で撤収させたのは、摩論の決死の努力だったというのが実情ではないですかね??
嬴政の決断の顛末を迎えたのに、桓騎がさらに『六将は剥奪しなくていいのか?』などと重ねてきます。
桓騎『なんなら返すぜ、あの金ピカの首飾り。』
嬴政『六国を滅ぼすには六将の力が必要だ、それは今も変わりがない、あの首飾りはそのままお前に預けておく。』
結局、桓騎の六将更迭も無く、この場は収められました。
これだったら、なんとなくですが、両者痛み分けって感じでしょうかね?
桓騎も六将としての受任状況の説明責任を果たさず放棄したのに、お咎めも無かったのは、繰り返すように、総じて摩論が頑張ったからの話でしたし。
嬴政も、桓騎の態度こそ問題ありますが、敢えて統治の話を語るに足るに足るでもない相手に、確かにムキになること無いでしょう。
大王自身、自ら切り出した軍律の話も『もういいや。』と思ったのかもしれません。
但し―、
念のためといか、最後の最後で次に同じような虐殺の暴挙に出たら、桓騎の首を刎ねる旨を明言してから撤収。
昌文君も吐き捨てるように、次に大王に向って足を上げれば、即両足を切り捨てるとの旨を言い渡し、大王の軍はその場を後にしました。
リン玉『フー。』
摩論『ハハ、助かった…。』
ここで、最後に史実の側面から神(作者)(ナレーション)声が語られます。
曰く―、
秦の軍律には元々戦場で取った首を褒賞に換える法があった。
秦の年紀に戦での首級の数が残っているのはその為と思われる。
しかし―、
史記始皇帝本紀にてこの首の数は桓騎の十万斬首以降記されることは無くなった。
あの?
なんか作品上は、政が頑張って、桓騎らこの先の将軍に虐殺させるのを制止させた見たいなエピソードになっていますが…、、
実質的に考えたら、結局、その首の数で軍功を評価するという法律自体が問題だっただけの話じゃないですか?
この法律がある限り、もう桓騎軍だけじゃなくて、飛信隊も含めて、秦軍全軍が嫌でも首取合戦しなくちゃ評価されませんよね??
もう、虐殺がどうとかの要因は一切関係無くて、最初から軍律変えとけよってだけの話じゃないんですかね??
むしろ、その、史実エピソード、ここで出すと全て今週と先週のお話が台無しになってしまいませんか???
しっかりしようよ…、大秦国の法制審議会…。
しかも、軍律とか言ってた嬴政自身、さいしょから『理由なくば(最初から)斬首するつもりで来た。』とか、摩論を論破して相手から逃げ場まで奪っておいて、やっぱり死刑止めるとか…。
全部、大王個人の腹心算断罪って、どこが法治国家の裁判やねん。(泣)
最後に、一人で悩んで座り込む嬴政。
当然です。
感情論ではなく、せめて改めて『秦国の軍律も軍制度もまだまだ未成熟でな~んも決めてなかったなァ…。あれ?そういえば、李斯を牢屋から出して何をさせようとしてたんだっけ? 内政全般? あれ?なんか、別の事だったような気がする…。』くらいの事は、真剣に悩んでいただかなくては全員が困ります。
信『こんなところに居たのか、政。』
姿を見つけてやってきた信。
久しぶりに再会した二人。
次号!!
おめでとうございます!!!
連載700回目の巻頭カラーという事で楽しみであります。
― キングダムネタバレ最新699話 以上 ―
次回もこの先の展開について、キングダムネタバレ予想をすすめていきたいと思います。
皆さんの予想やコメントもいただけると嬉しいです。どうぞお気軽に。