( 趙国地図 作画引用:原泰久先生 作 キングダム第703話)
早くも今年のキングダムも、いよいよ来週を残すダケになってきました。
しかしながら、新年を迎える前に、いちキングダム読者の予想として、今回は気の重くなるようなスジで予想を進めなくてはなりません。
前回の王翦と昌平君の思い付きにも見える、宜安攻め。
これ、鄴攻め編レベルで、連載期間が引っ張られることになりゃしませんかね!?
また、前回の考察編でも解説させていただいたように、キングダムの宜安攻めは、一見、史実上の秦軍の侵攻ルートを踏襲しているように見せかけてはいますが…、
その内実は、よくよく考察してみると、昌平君と昌文君の二人が、無茶苦茶な暴論で、これまでギリギリで成立していた戦略を途中放棄して、全く新しい戦争を、一から仕掛けようとしているだけの話であることがよく分かります。
昌平君自身、『鄴攻めを落としたら3年で邯鄲を攻略できる。』とか豪語していたのですが、もうワザと、邯鄲の陥落を延期させているようにしか見えません。
これはもしかしたら、スデに今から秦国を消耗させて、“楚の公子”として、復活する準備に取り掛かっているのかも!?
いや?っつーか、宜安攻めを謳い出したのは王翦なので、もしかしたら、こんな無駄な戦争をけしかけて秦国を消耗させる意図こそ、王翦の野心の裏付けになるものなのか?
ではでは、今回も複数の論点に分けて、キングダム予想を進めていきたいと思います。
キングダムネタバレ-先ずは閼与攻めで、王翦ターン
鄴攻め編で、史実ネタとして完全にスルーされてしまった、閼与攻略の話…。
今更ながら、描かれることになりました。
でなんで、これまた史実ネタとして、過去の秦軍の旧六将であった胡傷が、かつて閼与攻めで失敗した、因縁を王翦目線で回顧したり…、
そこからの導線で、王翦の過去や真意が垣間見られたりだので、王翦の根幹部分に係る話なだけに、神(作者)様としても、相当の覚悟で取り組むことになるのが予想できます。
ついでに言うと、旧六将であった胡傷が破れた相手というのが、未だに、キングダム本編において、未紹介である旧三大天趙奢を指すワケなので…、
この点でも、読み応えは期待できるものの、本戦というべき桓騎と李牧が相まみえるまでの、王翦ターンで、相当期間持っていかれそうな予想が立ちます。
まあ、その反面で、本来は現時点でとっくに攻略が済んでいなくては、全く辻褄が合わない、閼与攻略なだけに、神(作者)様としても、そんな史実に合わないタイミングの閼与攻略をクローズアップして描く訳にもいかないという意味での実情が働き…、
それこそ武城や平陽を陥落させた程度のノリで、話が進んで行くかもしれません。(※既に朱海平原戦で、大多数の閼与兵が消耗しているハズなので。)
しかしながら、現時点では、上記の胡傷と王翦絡みの観点から見ても、王翦自身の謎に包まれた来歴や、真意の部分に触れることが出来る、観点から考えてみると…、
閼与攻略での王翦の描写がどうなるかについては、やはり予想から外すことが出来ません。
鄴攻め編の時点で、この点が描かれることなく、ある意味で“先送り”されたと考えたら、尚のこと気になって仕方がありませんわ。
何より、宜安攻め自体、王翦の口から出てきた作戦なので、読者側としても、何か勘ぐってしまうのは、仕方がないでしょう。
つーか、鄴攻め編の事を今から穿り返しても全く仕方がないのですが…!?
本来の閼与は、鄴攻め編の時点で攻略してこそ、北方ルートで秦本国との動脈を接続するという意味で兵站成立を確立させ、最大効果が成立します。
そして、その更なる結果として鄴を陥落させて、邯鄲を最終的に南北から包囲するという、完璧な意味を持っていた行動ルートでした!
このように、史実を普通に読み解けば、王翦も昌平君も、その作戦行動に無理が無く、全く無駄がありません。
この点、キングダムの場合は、“兵糧攻めの掛け合い”という無理な根性比べで事にあたっただけでなく、斉という他国に自分達の運命を委ねるという、完全なる“お花畑発想”で戦争に勝利するという結果だったワケです。
キングダムネタバレ-明らかに不自然になる攻略順序
鄴攻めはもちろん、それは終わった話なのですが…、
だったら、ここからの閼与攻略の話は、宜安を攻めるための、その通過点である、閼与を攻めなくてはならないという話になってきます。
そして、キングダム作中の趙国地図を見ればわかるように(参照:703話)…、
その閼与を攻めるために、さらに道中の“武安”も攻略し、“閼与”との連絡線まで維持し続ける防衛網の構築が必要になってきます。
邯鄲のスグ隣の“武安”を攻略できたなら、『もうそのまま邯鄲攻めろよ。』って話しだと思います。
しかも、キングダムの秦国首脳がお粗末なのは…、
昌平君も昌文君も大王政も、一体、趙国盤図の何をどう見て分析を進めているのでしょう?
何を根拠に宜安を攻撃目標に定めたのでしょう?
ここら辺は、単に昌平君と王翦の『そう思うから。』だけが根拠になっているので、甚だ不可解です。
読者的には、『いやいやそうじゃなくて、“何故そう考えたの?”って理由を聞きたいんだけど?』という心象を持たれた方も多数いたかと思います。
一番困難な鄴攻めは終わったけれども…、『今更ながら兵站のルートを増やして太くする。』という意味も込めて、『今から閼与を攻略します。』でも、まだ話は理解できるのですが、それだったら別に宜安は放置でイイです。
第703話の最終ページの地図をご覧ください。
『邯鄲の王族が北に逃げたらどうすんだ!?』と昌平君が息巻いたとしても…、
閼与さえ押さとけば、西は太行山脈で元々趙王都は封鎖されており、東は敦与山なる山岳地域から河川が流れ、巨鹿の北方背後を封鎖していることが分かります。
ワザワザ今から宜安を攻略するくらいなら、巨鹿を落としたほうが、北への逃げ道を防ぎつつ、王都圏の包囲を兼ねる効果が遥かに高いです。
そして、閼与陥落後に秦国太原から増援を派遣することが可能なら、その増援はむしろ、閼与を起点とした、“巨鹿”及び“武安”の攻略と維持にこそリソース集中させるべきと考えられます。
また、敵である趙軍への波及効果としても、これは多大な脅威になります。
李牧がどれだけ優秀で、王都兵まで屈強であったとしても、邯鄲王都軍は、閼与、武安、巨鹿の3方向だけでなく…、
既に完成させてしまった全長100kmにも及ぶ長城の維持にまで兵力を回さなくてはならず、間違いなく早期に防衛網が破綻します。
その上で、本当に昌平君が心配するように、『邯鄲の王族がさらに北に逃げたらどうする?』という課題は残りますが、そんなもん、如何に王族が延命を図ったとしても、生産・経済基盤である、中原都市を先に押さえれば、勝手にやせ細っていくことは間違い無いです。
昌文君が『残党が再結集して…、』とか心配していますが、再結集した連中をどうやって維持すんだよって話でしかありません。
そして、最終、李牧の本拠地の雁門に逃げ込んだとしても、そのまま秦の代わりになって、さらに北方の騎馬民族から、全中華の民を守るべく、防衛に一生を捧げてもらえばイイじゃないですか。
多分、そうなったら、遊牧王もカクカイも、雁門で多少はいい顔になって戦っていますよ。(笑)
また、こうして見ると、李牧は長城を作ったのは良いですが、維持となると正しく“バブル建築”のような発想と非常に近いことが分かります。
李牧がランニングコストまで意識していたとは思えません。
加えて史実と違って、キングダムの秦国には最大の強みが存在します。
事前に、李牧という男が、趙国に存在しているということを知っている点です。
この点さえ理解しておけば、秦国としては李牧の所在だけを徹底的に内偵で傍受し…、
李牧が所在する軍に対しては防御に徹し、それ以外の敵部隊を徹底的に叩くを繰り返せば、ソッコーで趙など滅亡できます。
特に、フテーのいる敵部隊を狙いましょう。(笑)
(※逆に李牧もこの点を熟知していて、秦軍にフテーの陣地情報を流し、囮に使用することも可能です。そして、さらに王翦や桓騎も、“李牧がフテーを囮に使う”ことを見抜くので、“フテーフェイント”を起点として、互いの名将たちの腹の読みあいという、高度な心理戦が見られるかもしれません。)
繰り返しますが、閼与は鄴攻めの時点で陥落させとけば、『もっと戦全体が楽に終わったやろ。』という話なのですが…、
神(作者)様が何故か、鄴攻めを“お腹が空いて頑張った戦い”であることに拘ったがために、その余波は、こうして邯鄲包囲網作成の、無理さ加減にまで、大きく不可解なまでの戦略として影響が出ています。
実際には無駄な動きと戦闘が発生している時点で、これは“戦略”として成立していないのですが、恐らく、今後も戦全体の進行が進むにつれて、どうしても、この辺の歪さが大きく目立ってしまう形になりそうです。
キングダムネタバレ-三軍を分断され撃破される桓騎
戦術レベルでは分かりませんが、今の時点で、宜安を攻めることを目標にしたことで、武安を楊端和、閼与を王翦が占領して、宜安は桓騎が攻略する流れが完全に浮かび上がってきます。
史実で考えてみると…、
元々、秦軍が北方ルートから、邯鄲を攻める予定だった桓騎軍が、予想外に強敵であった李牧と初めて遭遇して…、
“初見殺し”の意味も手伝って、宜安で敗北したと考えたら、その流れはカナリ自然な結果だと言えます。
恐らく李牧としても、もともと国力の上で強大な秦軍を相手にする以上、数的劣勢を補うために、情報の非対称性、地形やタイミングなど、寡兵で敵を穿つ為に相当の工夫を重ねたのではないでしょうか?
この点、史実の李牧とキングダムの李牧の二者が共通する作戦部分を真っ先に挙げるとしたら、やはり、王翦、楊端和、桓騎の三軍を相手に、同時に戦うことをせずに、各個撃破を狙っているという点だと思います。
史実では、王翦、楊端和らと、桓騎が合流する前に無力化しておくのが狙いであったと考えられ、キングダムでは、今現在、足並みを揃えている三軍を南北にバラバラにしてしまうことで、三軍分断を実現しようとしています。
もちろん、秦軍側にミスがあった上での結果なのですが、戦では敵のミスを誘発させ、敵の欠点を作り出し、そこを徹底的に突くのは基本なので、やはり“戦の勝敗は開戦の前に決定している”と言えます。
特に、今回においては、李牧が北方から秦国サイドに攻撃する等の、何の陽動作戦も無いまま、勝手に秦国側が被害妄想に駆られて北上してきているので、願ったりです。
まぁ、李牧にとっては、長城こそが、秦軍北上の仕込みだったのは分かるのですが、それが宜安までの秦軍北上に繋がったのは、客観的には本当に運としか言いようがないです。
趙軍での楽彰さんも『北過ぎる…、』言っているあたり、実はもの凄く冷めていて、『李牧殿と王翦の、二人の馬鹿同士の波長が合ったからかw』などと考えているかもしれません。
また、桓騎軍が宜安までの北上軍だったと仮定すると、太原からの正規兵の合流軍があり、桓騎本軍とこれを連合させて戦うとしても、恐らく桓騎は上手く使いこなせないでしょう。
ほぼ100%、李牧には秦友軍の動きは“桓騎本軍の盾や捨て石としての動き”と見破られ、これも徹底的に分断包囲されていくでしょう。